熱処理用語の解説

油焼入れ(あぶらやきいれ)  [a03]

焼入れ冷却の際に、油中で品物を冷却する方法で、「油冷(ゆれい)」ともいわれます。

他に、焼入れ時の冷却方法には、水焼入れ、空気焼入れなどがあり、一般的には、鋼を急速に冷却するほど硬化します。

しかし、各部での冷却の違いで変形が大きくなることや、焼入れ性の高い鋼種では、焼割れとともに、残留オーステナイトが多くなって、硬さが入りにくくなるということもあり、鋼種と要求する硬さに応じて冷却材を選定する必要があります。

一般的には、鋼種ごとに熱処理方法が示されており、それに沿って熱処理しますが、品物が大きくなると冷却速度が低下するために、油焼入れすることになっている鋼種でも、水冷することがありますし、逆に、高い硬さが必要なければ、空冷することも行われます。

一般的に用いられる焼入れ油は、冷却特性を調整するために、単一の油種ではなく、混合油が用いられ、さらに、添加剤などが加えられているものが多いようです。

通常の油温は60℃程度が冷却性能が安定するものが多く、100℃を超えると焼入れ油が劣化しやすいので、工業用炉では、温度調節をして温度を一定に保っています。

焼割れ防止や恒温処理のために300℃前後で使用できる特殊な高温用油(ホットオイル)を用いる場合もあります。


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焼入れ時の冷却で、水、油、大気などの冷却速度は水>油>空気の順で早く、油冷は中間的な冷却用に用いられます。

油中に焼入れしたときの鋼の硬さは、鋼種(成分)や品物の大きさで変わるほか、冷却剤の量や温度、循環の程度などで冷却する速度が変わるために、熱処理工場などでは、用途や設備に応じて焼入れ油の種類を変えている場合もあります。

例えば、大気加熱した品物と真空炉などの雰囲気炉では違う種類の油を使用しているなど、目的にあった油が使用されます。

【水焼入れ鋼種の油焼入れ】
熱処理作業においては、焼入れ性があまり良くない構造用鋼の調質などでは、水焼入れするのが基本の鋼種であっても、油焼入れする場合も多いのですが、これは、品物の断面積が大きくなると、表面と内部の組織差が大きくなるのを避けることや、水焼入れで生じる不均一の冷却を嫌う場合などには、水焼入れをしないで、あえて油焼入れすることがあります。

特に、構造用鋼などで大きなサイズの品物の調質で、断面の引張強さや圧縮強さが均一な品物が望まれる場合には、あえて水焼きしないで油焼入れする場合がしばしばあります。

【実際の熱処理作業では】
焼入れ時の割れ(焼割れ)を防止するため、構造用鋼などの一部を除いて、油中で完全に冷やすということは少なく、特に、焼入れ性の良い(硬化しやすい)鋼種では、表面温度が100℃以下になると焼戻し操作に入ります。(鋼種や形状によっては、それ以上の温度で焼入れを停止して、焼戻しに入る場合もあります)


その他、熱処理では、鋼材の要求硬さや変形抑制、焼割れ防止などのために、冷却方法を変えることなど、いろいろな方法で冷却過程をコントロールします。

冷却速度を早めるために急速に循環したり、品物を動かしますし、熱処理品が大きかったり変形や割れやすい形状のものは、途中で引き上げて、内外部の温度が均一になるようにして冷却したり、高い硬さを得るために、水冷と油冷を併用するなどで冷却をコントロールすることも多く、これらについては、熱処理の教科書にも書いていないのですが、熱処理操作では大切なことです。

焼入れ油は、焼入れ時には高温の品物と接触して劣化して行くために、時間経過とともに冷却性能が変化します。

このために、安定した冷却性能を維持するためには、定期的に焼入れ油の冷却性能を管理して、油を入れ替えたり新油を追加するなどで焼入れ性能を管理する必要があります。


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用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

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