熱処理用語の解説

腐食液 (ふしょくえき)  [h24]

金属表面を観察する場合に、組織などを見やすくするために、選択腐食または着色するための液体(薬品)を「腐食液」といいます。

腐食液を使わないで鏡面研磨面をそのまま観察したものの顕微鏡写真には、「無腐食」という表記がされている場合もあります。

酸(強酸の薬品)を用いることが多く、その調整や取り扱い、廃液の処理には注意が必要です。

組織現出用の腐食液は多種類あるので、特徴的な組織が見えるものを使えばいいのですが、液の種類や濃度、浸漬時間などによって、組織の見え方が変わリます。

そのために、通常は、熱処理の適否などを見るために、標準組織写真の例と組織の「見え方」を比較をする必要があることが多いので、鋼種に応じたいろいろな腐食液を使うのではなくて、数種類に限定して使用するほうが組織の違いが比較しやすいでしょう。

比較的よく使われる腐食液は、硝酸アルコール溶液(ナイタール)が使われる場合が多いようです。

ナイタールは硝酸をアルコールで2-3%の濃度にしたものですが、アルコールはどのようなものでもいいようで、安価なメチルアルコールやイソプロピルアルコールなどでも現出組織に影響はないのですが、蒸気を吸うことに対して比較的安全なエチルアルコールを用いるのがいいでしょう。

その他では、ピクラールと呼ばれるピクリン酸溶液やステンレスなどの腐食しにくい鋼は王水などの強酸や、王水(硝酸と塩酸の混合液)にグリセリンを加えて腐食速度を遅くして用いるなどをしますが、もちろん、腐食液が変わると、まったく違う顕微鏡組織になります。

腐食することやその操作を「エッチング」ということもあります。

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新潟県工業技術総合研究所さんのHPには、貴重な組織写真やそれをうまく説明されている記事があるので、そちらを参照していただくといいでしょう。
https://www.iri.pref.niigata.jp/topics/H28/28kin4.html


その新潟県工技研さんのHPにある ①硝酸アルコール溶液が約3%ナイタールです。 また、③が「ピクラール」と称される、ピクリン酸水溶液です。


昭和年代後期は、鉄鋼技術が発達した時期で、いろいろな腐食液を用いた写真も多くみられたのですが、近年は、ナイタールで腐食した写真が多くなっているようです。

芸術写真をとるには、きれいに見える腐食をすればいいのですが、組織観察の目的から言えば、腐食の条件を合わせることで組織の違いがわかるほうが理にかなっています。

腐食液を統一してその見え方を確認して、もしもうまく見えにくいようならその他の腐食液を使う・・・という方法にすれば、腐食のしかたなどに慣れますし、熱処理した時の組織も判定しやすくなりますし、ナイタールを使って腐食した組織写真が多いので他の写真も利用できるという利点もでてきます。

腐食~観察作業が迅速に

腐食したあとも時間とともに腐食が進行します。

中和処理をする場合もありますが、それによって見え方が変わる場合があるので、基本的には、一連の作業として「研磨→腐食→観察・写真撮影」を行うようにするのがいいでしょう。

上に紹介している新潟県工業技術総合研究所のHPでは、きっちりと腐食後に中和処理されているようですが、それでも、時間が経過すると見え方が変わってきます。

顧客に見せる必要がある・・・など、時間をおいて観察する場合は、「シールピール(太洋物産)」という顕微鏡観察用保護樹脂スプレーで表面を保護しておいて、観察時にはそれをはがして再観察するという用い方がありますが、それでも、鉄鋼組織は時間とともに変化していますので、腐食してからなるべく時間をおかないようにして観察するのが基本です。


金属顕微鏡組織は、表面組織の微細な成分や組成の違いが、腐食程度に差を生じることで組織の違いとなって現れます。

表面に微小な凹凸ができたところを観察することによって組織の違いが見えるのですが、腐食の方法以外に、光源やその配置や照度によっても変わリますので、顕微鏡組織の観察は、ともかく、熟練が必要な作業です。

近年は倒立金属顕微鏡以外にマイクロスコープなどで多人数で観察することもできるようになってきましたし、コンピュータによる画像処理ができるようになっていますので、それらは大きな進歩ですが、情報を変えてしまう危険があることにも注意が必要です。

このようなこともあって、熱処理や材料の可否判定や事故品の調査などの作業は、ともかく経験して熟練することが要求されます。


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用語の索引

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か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

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